近年、グルココルチコイド(GC)過剰曝露による海馬の組織学的変化(組織変性)が報告されて以来、GCと老年期痴呆との関連性が示唆されている。われわれも、昨年度までに、慢性ストレス曝露あるいはGC過剰曝露によるラット海馬の機能変化-(1)迷路学習障害、(2)海馬局所血流量低下、(3)海馬内アセチルコリン放出量低下、および(2)(3)における日内変動消失傾向を報告している。そこで、GC過剰曝露ラットについて、摂食量、飲水量、自発行動量および深部体温をパラメーターとして日内リズム障害の有無を検討し、さらにコリン作動性神経毒であるAF64Aを投与した痴呆モデルラットについて海馬局所血流量測定を加えて、同様なパラメーターを計測し、比較検討した。 1)GC過剰曝露ラットの行動解析;摂食、飲水、自発行動量および深部体温について、対照群と比較し有意差を認めず、いずれも明期に低く、暗期に高い明確な日内変動を認めた。 2)海馬局所血流量;AF64A投与ラットの海馬局所血流量は、GC過剰曝露ラットと同様に、対照群に比べ有意に低下しており、明期に低く暗期に高い日内変動の消失を認めた。そのためAF64A投与ラットでは、暗期にかけての増加は平均約10%にとどまった(対照群、20%) 3)AF64A投与ラットの行動解析;摂食、飲水、自発行動量について、対照群と比較し有意差を認めず、いずれも明期に低く、暗期に高い明確な日内変動を認めた。深部体温については、対照群に比べ有意な上昇を認めるものの、同様な日内変動は認められた。 以上より、GC過剰曝露ラットは、組織学的に傷害される海馬のリズムは障害されるものの、その他の代表的な生体リズムは一般に保たれること、コリン作動性神経障害された痴呆モデルラットについても同様な障害パターンを示すことが明らかとなった。
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