てんかん、三叉神経痛、躁うつ病などに有効とされているカルバマゼピン(CBZ)とその活性代謝産物のカルバマゼピン-10、11-エピキサイト(CBZ-E)および不活性代謝産物のカルバマゼピン-10、11-ジオール(CBZ-D)のカテコールアミン分泌に対する影響を調べるために培養ウシ副腎髄質細胞を用いた。この細胞は神経稜由来のパラニューロンであり中枢ノルアドレナリン神経細胞と多くの点でその性質を共有している。すなわち副腎髄質細胞を刺激すると外液Ca^<2+>濃度に依存してカテコールアミンの生合成や分泌の促進がみられる。一方、この細胞にはカテコールアミン分泌に関与する少なくとも3種類のイオンチャネル(ニコチン性アセチルコリン受容体イオンチャネル、電位依存性Na^+チャネル、電位依存性Ca^<2+>チャネル)が存在する。これらイオンチャネルやカテコールアミン分泌に対するCBZおよびその代謝産物について検討した。その結果、短期処理(5分)では1)CBZ(3-30μg/ml)およびCBZ-E(0.3-3μg/ml)は共にニコチン性アセチルコリン受容体イオンチャネル、電位依存性Na^+チャネル、電位依存性Ca^<2+>チャネルを阻害することによりカテコールアミン分泌を抑制した(これらの結果は現在Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacolへ投稿し、revise中です)。一方、2)CBZ-Dはいずれのチャネルも阻害しなかった。以上のことから、CBZおよびCBZ-Eのこれらイオンチャネルへの阻害作用は神経精神疾患に対する臨床効果と一部は関係しているかも知れない。しかしこれらの薬物の臨床効果発現までには約1週間程度かかるため、現在我々はCBZ、CBZ-EおよびCBZ-Dの副腎髄質細胞に対する長期処理(7日)実験ならびにddyマウスの脳の各種イオンチャネルへの影響(in vivo)を検討中である。
|