研究概要 |
慢性腎不全患者の長期合併症に透析アミロイドーシスがある。最近、私たちは沈着アミロイドの主要成分であるβ2ミクログロブリンがメイラード反応を受けAdovanced glycation end products(AGEs)化していることをあきらかにした。本研究の目的は、透析アミロイドーシスにおけるAGEs化β2ミクログロブリンの病態生理学的意義を明らかにする為、透析アミロイドーシスの発症において重要な役割りを演じている単球・マクロファージや滑膜細胞に与えるAGEs化β2ミクログロブリンの影響につき検討することであった。 1.単球の遊走能に与える影響の検討 Boydenチェンバーを用いて、末梢血より分離した単球の遊走能に与えるAGEs化β2ミクログロブリンの影響につき検討したところ、正常β2ミクログロブリンには全く遊走能が認められなかったが、患者より精製したAGEs化β2ミクログロブリンは単球の遊走を強く亢進した。 2.マクロファージのサイトカイン産生に与える影響の検討 AGEs化β2ミクログロブリンは、単球より分化したマクロファージに作用し骨吸収性サイトカインであるInterleukin-1β,Interleukin-6,tumor necrosis factor-αの産生を亢進した。一方、正常β2ミクログロブリンには、このような生理活性は認められなかった。これらの事実は、半定量RT-RCRにて、mRNAレベルでも確認された。 3.滑膜細胞のコラゲナーゼ産生に与える影響の検討 AGEs化β2ミクログロブリンが、マクロファージに作用し産生する量のサイトカインを培養ヒト滑膜細胞にくわえたところ、有意なコラゲナーゼ産生が亢進することが明らかとなった。 以上、AGEs化β2ミクログロブリンが、単球・マクロファージに作用し、透析アミロイドーシスの発症に重要な骨吸収性サイトカインやコラゲナーゼの産生を促進する事が明らかとなった。すなわち、AGEs化β2ミクログロブリンが透析アミロイドーシスの発症に関与している可能性が示唆された。
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