研究概要 |
[方法] 300-550gのS-Dラットを用い30%III度熱傷を作製,1.熱傷2時間後に皮膚,肺,肝,胃,小腸を採取,MDAを測定した.2.24時間毎7日間,アルギメート^R(AG)2ml(NOの前駆物質arginine108mg含有)(n=5),AG1ml+モリプロンF^R(MF)1ml(62mg)(n=4),MF2ml(16mg)(n=4)腹腔内投与し,24時間蓄尿とともに,飲水量,体重変化,熱傷創変化を観察した. [結果] 1.皮膚,肺,肝,胃,小腸組織内MDAはそれぞれ1533±844(SD)nmol/g,336±77,349±83,372±266,869±464で,非熱傷群の組織内MDA(それぞれ135±115nmol/g,180±12,203±8,188±165,80±25)に比し増加した. 2.(1)arg投与量(mg/kg:x)と体重変化率(%:y)との間には,4病日にy=0.88+0.00090x-0.0000038x^2(r=0.68,p<0.02),7病日にy=0.85+0.0013x-0.0000054x^2(r=0.70,p<0.01)なる相関関係が認められた.体重減少はそれぞれの病日でxが120mg/kg,119mg/kgのとき最も抑制された.(2)飲水量-尿量差より算出した体内水分貯留量+不感蒸泄量(ml/kg/hr:z)は,1病日ではxが150mg/kgで最大であった(z=0.35+0.022x-0.000073x^2,r=0.60,p<0.05)が,4病日以後ではxの少ないラットほど多く(4病日z=2.55-0.0018x-0.000013^2,r=0.74,p<0.01,7病日z=6.65-0.024x+0.000032x^2,r=0.70,p<0.01),体重変化率とあわせ考えるとx<120mg/kgでは不感蒸泄が多いと考えられた.(3)7病日における熱傷創はAG2ml投与群では一様なIII度熱傷創であったのに対し,MF2ml投与群では頭側熱傷創の40〜50%に出血性壊死を認めた. [結語] ラット30%III度熱傷モデルにおいて熱傷創のみならず肺,肝,胃,小腸にも活性酸素傷害が認められた. NOの前駆物質であるarginine120mg/kg前後の連日投与は体重維持,熱傷創構築維持に有用と考えられた.さらに組織のSOD,NOS活性,尿中NOxの測定を加えることによりNOの熱傷病態への関与が明らかになると考えられる.
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