この研究は家族集積性を示す日本人乳癌家系において、BRCA1を含むと想定される染色体17q12-21領域の高多型性マーカーを用い連鎖解析を行い、また同領域において散発性、家族性乳癌患者のヘテロ接合性の消失を調べ、乳癌の発生、進展に関与する遺伝子異常を解明することを目的とした。 方法として、当院において、家族集積性のある乳癌家系(発端者である乳癌患者から3親等以内に3名以上)の乳癌患者を認める場合を調査し、家族集積性乳癌患者から癌部、非癌部、抹梢血リンパ球などよりDNAを抽出し、染色体17q12-21領域の高多型性マーカーを利用しPCR-SSCP法を行う計画を立てた。 1994年度内の乳癌160症例のうち、家族集積性のある乳癌家系に1例も遭遇しなかった。従って、過去30年間(1965〜1994年)に当科で扱った乳癌症例2574例を用いて家族集積性の調査を行った。家族集積性の認められた家系は28家系(1.1%)であり、そのうち、18家系で、各家系の2人以上の腫瘍の組織像の類似性を比較検討ができた。その結果、母、娘型は家族集積性の認められた28家系中8家系で(28.6%)で類似性は5/6(83%)、姉妹型は15家系(53.6%)で、類似性は6/8、(75%)、伯母型は5家系(17.9%)で類似性は3/4(75%)であり、家族集積性の認められ、各家系の二者間で腫瘍の類似性のみられたのは14/18(78%)であり、家族集積性のある乳癌でも必ずしも均質でなかった。このことを考慮に入れて、目下末梢血リンパ球を用いて遺伝子異常を検討中である。
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