研究概要 |
American Type Culture Collectionよりヒト乳癌細胞を抗原として得られたヒト型モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ-JDB1とRi37を購入し、培養を行い、免疫グロブリンを精製し、その性質を検討したが、ヒト乳癌細胞と効率よく反応する抗体は得られなかった。一方、ヒトc-erb B-2産物を認識するマウス由来のモノクローナル抗体であるA0011抗体とウシRNaseをS-S結合にて架橋したconjugateを作製し、細胞当りのc-erb B-2産物発現がそれぞれ異なった4種の乳癌細胞株(MCF-7,BT-20,SKBR-3,MDA-MB361)にin vitroで投与し、その殺細胞効果をMTT法で検討した。c-erb B-2産物を過剰発現している乳癌細胞株であるSKBR-3に対して、A0011やRNase単独及び両者の混合物を投与しても、その殺細胞効果10%以下であったが、上記と同じRNase量に相当するconjugateを投与すると、95%の殺細胞効果が認められた。このconjugateを細胞当りのc-erb B-2産物量が異なる4種の乳癌細胞株に投与すると、殺細胞効果と細胞当りのc-erb B-2産物量との間には正の相関が認められた。次に、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)に対するモノクローナル抗体であるA528にRNaseを結合させたconjugateを、上記の乳癌細胞株にin vitroで反応させると、細胞当りのEGFRが最も多いBT-20で著明な殺細胞効果が認められ、EGFR数が減少するにつれて殺細胞効果も減少していた。以上の結果は、ヒトにも存在しているRNaseを増殖因子受容体を介して細胞内に取り込ませることにより癌細胞を選択的に死滅させることが可能であることを示しており、今後さらなる臨床応用に向けた研究の発展が期待される。
|