重症急性膵炎の治療成績を向上させるためには、発症早期より膵局所における炎症の進展を抑制することが必要であり、この過程には活性酸素などのフリーラジカルによる細胞障害作用や、膵の虚血性変化が深く関わっていると推察される。我々は、微小血管内の血球成分の動態や血管透過性の変化を生体顕微鏡システムを用いて検討してきたが、ラットを用いたセルレイン急性膵炎モデルの早期変化として、膵細静脈レベルにおける血管透過性の亢進が生じることを画像として捉えた。本研究では、SODトランスジェニックマウスを用いて、活性酸素と血管内皮障害との関係について検討した。急性膵炎作成後、SODトランスジェニックマウスでは正常マウスにみられた早期の血管透過性亢進が有意に抑制された。このことから、血管透過性の亢進には活性酸素による血管内皮障害が関与していることが示唆された。また、集合静脈の部位を中心として急性膵炎作成後の正常マウスでは、白血球のrollingやstickingが確認された。すなわち白血球による二次的な内皮障害が進展する可能性が推測される。これは内皮と白血球とのadhesionを抑制する役割のあるnitric oxideが、活性酸素のスカベンジャーとして消費され、その結果として白血球と内皮との反応が悪化したとも考えられる。今回までの検討では、いずれも軽症の急性膵炎モデルを使用しているが、重症膵炎時に見られる壊死巣形成のメカニズムを解明することを目的とし、現在、胆汁酸を用いて重症膵炎モデルを作成し検討を開始している。
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