研究概要 |
大腸癌の生物学的態度を研究するために,大腸mp癌を対象として増殖形式を分類し,Hematoxylin-Eosin(HE)染色,High iron diamine-Alcian bluc pH2.5(HID-AB)染色,ABC法によるPCNA染色,p53染色を施行した.癌を下田分類により,polypoid growth(PG)型,non-polypoid growth(NPG)型,および中間型に分類した.彼らは,PG型癌とNPG型癌は発生経路が異なり,前者がadenoma-carcinoma scquenceに基づき,後者がde novo発生に基づく仮説を提唱している.我々の検討では,NPG癌はPG癌に比較して,小径,若年者発生,リンパ節転移を来しやすい性質を有していたが,下田仮説における癌発生から手術に至るまでの速度の違いを考慮すれば,我々の結果はこれに矛盾しないと考えられた.さらに癌に隣接する移行部粘膜(Transitional mucosa,TM)は癌の発生早期においてはadenoma carcinoma sequenceによる癌では腺腫に,de novo発生癌では癌隣接粘膜であったと推測され,何らかの相違があるものと仮定して,同部に対してHID-AB染色,PCNA染色,p53染色を施行した.正常大腸粘膜の杯細胞粘液はsulphomucinが優位であるが,TMではsialomucin優位のものがある.この変化は癌の増殖形式と関連し,TMがsulphomucin優位のものはPG癌が多く,リンパ節転移の頻度が少ない結果を得た.PCNA染色,p53染色からは,TMには細胞増殖活性の亢進はないこと,さらにTMが前癌性変化とはいえない結果が得られた.TMにおける粘液組成の変化は,他の神経ペプチドの異常,あるいは癌組織と担癌大腸との情報伝達に基ずく可能性を考えて,今後の研究としたいと考えている.
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