今回の研究は、閉塞性黄疸犬に対し肝血流を遮断したとき門脈-大腿静脈シャントを造設し、腸管の鬱血を回避することで、全身状態あるいは肝臓に対しシャントがどの程度有効であるかを検討した。 黄疸作成のためポリエチレンカテーテルをVater乳頭より逆行性に総胆管に挿入し固定した。一週間後、15分間の肝血流遮断前に門脈と大腿静脈をバイパスした群としない群に対し、肝動脈血流量、門脈血流量、アンモニア、動脈血ケトン体比、肝臓および血清過酸化脂質、GPTを測定した。 結果は、シャント非造設群の肝血流遮断後の血流回復率はシャント造設群より有意に低下した。 シャント造設群のアンモニアは遮断中に一過性に上昇したがまもなく正常範囲に低下した。 虚血中動脈血ケント体比は下降したが、遮断解除後回復した。両者に有意差は認めなかった。 血清過酸化脂質は虚血中シャント非造設群で上昇したが、肝組織過酸化脂質に有意差はなかった。 シャント群のGPTは解除後60分で有意に低下した。 非シャント群の死亡率は80%(4/5)でシャント群の死亡率は20%(1/5)であった。 結局、アンモニアとケトン体比の変化は死亡率に影響をおよぼさなかったが、肝血流回復率の低下と血清過酸化脂質の上昇は、全身状態に影響をおよぼしたと考えられた。 今回の研究から、Pringle法は閉塞性黄疸患者には危険であるが、門脈-大腿静脈シャントを造設することで危険は少なくなることが示唆された。
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