担癌生体に対する栄養の改善を目的として、外科領域における高濃度分枝鎖アミノ酸(以下、BCAAと略す)高カロリー輸液の効果に関して分子生物学的効果の面から研究した。背部皮下に吉田肉腫細胞を移植したラットに、総アミノ酸に対する重量成分比が高濃度の36%BCAAを含む完全静脈栄養法(以下、TPNと略す)による輸液(36%BCAA-TPN)を施行し、肝臓より分泌される蛋白質のトランスフェリン遺伝子および他の遺伝子への転写調節機能をもつc-fos遺伝子の発現量を測定した。 本研究では、移植吉田肉腫の増殖早期において高濃度36%BCAA-TPNを施行たところ、宿主の血清中アルブミンや血清中トランスフェリンのレベルを維持すること、また肝臓中トランスフェリン遺伝子の発現量を対照の高濃度36%BCAA-TPNを施行した非移植ラットに比べ著しく低下すること、および肝臓中c-fos遺伝子の発現には変動を認めないことなどの結果を得た。 以上のことより、移植吉田肉腫の増殖早期において、高濃度36%BCAA-TPNの施行は、血清中の肝分泌蛋白には変動を影響を与えず、肝臓中のトランスフェリン遺伝子の転写を抑制した。これらの成果は、担癌生体に対する栄養改善の効果を知る指標となるものと示唆された。
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