研究概要 |
本年度は特に、胸腔内移植対象患者の中で最も重篤で末期的な心肺不全に適応され、術後の両臓器の拒絶反応の診断・管理がその成功の鍵とされる心肺同時移植における拒絶反応の早期診断について検討した。雑種犬を用いて胸腔内心肺同時移植(working心肺モデル)を行い、移植心の心房に双極電極を装着した。術後、維持量の免疫制御療法(cyclosporine5-10mg/kg/day,prednisolone0.5-1.0mg/kg/day)を行い、毎週1〜2回の心・肺生検と、同日に電気生理学的検査を中心とした心機能評価並びに放射線学的検査を中心とした肺機能評価を行った。採取した生検組織は、光学顕微鏡所見等により、国際心肺移植学会基準に基づいて移植心・肺の拒絶反応の病理組織学的重症度を判定した。Working移植心5例における刺激伝導系の有効不応期は術後経過中に約40〜50%延長し、心筋生検組織でIb〜IIIbの拒絶反応がみられた。Working移植肺5例では、吸入療法中のX線透視検査により、術後経過中に対側肺に比べてX線透過性が低下し、肺生検組織でIIa〜IVcの拒絶反応が認められた。以上の結果をコンピューターで解析したところ、心臓電気生理学的検査および肺機能検査のデータは、拒絶反応の病理組織学的重症度との間に相関関係を認め、基本的にはこれまでの心・肺単独移植の際のデータと同様の傾向を示した。現在生存中の2例に上記の検査を継続しつつ、さらに免疫抑制療法の追加による影響を検討している。
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