| 研究概要 |
ラットの全脳への放射線照射が、グルコース及びアミノ酸の輸送動態や脳血流に及ぼす急性期の影響を局所脳血液量の変化をTakasatoらのin situ brain perfusion techniqueにより定量的に調べた。また放射線照射中のreal timeの脳血流変化をlaser Dopplerにて測定した。
Sprague-Dawley ratを照射群とコントロール群の2群に分け、照射群には10GyのX線全脳照射を行い、照射2時間後、ペントバルビタール腹腔麻酔下に右外頚動脈にカニュレーションを行い、右総頚動脈を結紮した直後radioactive tracersを含む重炭酸緩衝生食で脳を30秒潅流し、断頭した後、右脳の7箇所((大脳皮質3箇所、白質、海馬、尾状核、視床)から組織を採取しradioactivityを測定した。局所脳潅流量、plasma volumeのtracerにはそれぞれ^3H-diazepam、^<14>C-sucroseを用い、グルコースおよびアミノ酸のtracerにはそれぞれ^<14>CでラベルしたD-glucoseとL-leucineを用い、それぞれの脳毛細血管permeability surface area product(PA)を計算した。
コントロール群に比し照射群は局所脳潅流量が大脳皮質において約40%、海馬、基底核部において約30%の増加がみられ、plasma volumeも全組織で10%〜20%の増加がみられた。ロイシンのPA値にはいずれの部位にても変化が見られなかったが、グルコースは全組織でPA値の増加傾向をみとめ、脳毛細血管のレベルにおけるグルコース輸送の亢進が示唆された。またlaser Dopplerによる頭頂葉皮質の脳血流量は放射線照射中よりおよそ40%の増加をしめし、照射後も持続した。
本研究の要旨の一部は、1995年7月XVII International symposium on cerebral blood flow and metabolizm (Cologne,Germany)にて発表予定である。
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