研究概要 |
トリメチル錫を経口投与し、海馬萎縮を来たした8週齢の雄SD ratを作成した。15-17日齢のSD rat胎獣から大脳中隔野を摘出しWGA-ferritinを作用させて細胞浮遊液を作成して、前記ratの背側海馬に定位的に移植した。 1.MRI:移植細胞は急性期からT1強調像,T2強調像ともに低信号の一塊の組織として観察され、その局在を評価できた。経時的に観察すると徐々にこの像は不鮮明となっていった。移植針刺入経路はT1強調像,T2強調像とも低信号に観察された。WGA-ferritinを用いたこの画像法はrat脳内に移植された神経細胞の位置情報を与えることがわかった。 2.病理組織学的所見:MRI撮像後のratは順次潅流固定しパラフィン包埋、MRI像との対応を検討した。移植針刺入経路内部から移植部位にかけて小型の細胞と大型の細胞を認めた。大型の細胞の比率は経時的に漸増し、小型の細胞は漸減した。どちらの細胞も鉄染色では強い陽性を示しMRIに於ける低信号はこの鉄に由来するものと考えられた。この所見は手術後急性期から認められたため、手術操作に由来するヘモジデリンではなく、標識させたWGA-ferritinを示している。現在、移植片の生着率と脳内での様態を評価するために、免疫組織染色によってWGAの局在を証明しようと試みている。固定法について、WGA免疫組織染色の方法、またWGA-ferritinをドナー細胞に最大限取り込ませる方法について、現在改良を加えつつある。第4回海馬と高次脳機能研究会(1995年7月)、第54回日本脳神経外科学会総会(1995年10月)での報告を予定している。
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