1.basic FGF promotorを組み込んだCAT plasmid を、basic FGFが発現しているヒト神経膠腫細胞U87MGに導入したところ、CATの著しい発現が認められた。この結果から、神経膠腫細胞におけるbasic FGFの過剰発現はその転写活性の昂進によることが証明された。 2.実験1)に加えて、basic FGF promotor CAT plasmidとP53発現ベクターをヒト神経膠腫細胞U87MGにco-transfectして、CATの発現の変化を調べた。その結果、CATの発現は、wild type P53によって抑制され、mutant type P53によって促進された。これより、basic FGFの発現は、P53によって修飾されている可能性が示唆された。 3.上記のin vitroの実験データが、実際にヒト脳内に発生している神経膠腫にあてはまるかどうかを、手術摘出標本における免疫染色、PCR-SSCP、direct sequence法を用いて、basic FGF発現量、P53の発現量およびP53の遺伝子異常との相関を確認した。その結果、一塊の腫瘍組織におけるbasic FGFとP53の発現量には有意な差は認められなかった。このin vivoのデータと上記結果のdiscrepancyは、同一腫瘍組織内にも腫瘍細胞のcloneの差によるheterogenesityが存在するためと考えている。現在、これを証明するため、P53とbasic FGFの二重免疫染色などを予定している。
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