1、中膜平滑筋細胞におけるribosomeの形態学的変化 電顕下にribosomeを観察し、4個以上凝集しているribosomeをaggregated ribosomeとし、aggregated ribosomes/total ribosomes×100にてaggregated rateを算出した。Control群ではaggregated rateは73%であった。経斜台的にPGF2a10-4Mを局所投与した生理的収縮群のaggregated rateは70%であり、生理的血管収縮ではribosomeに形態学的変化は認めなかった。クモ膜下出血モデルにおけるaggregated rateは、クモ膜下出血後1時間では62%と変化を認めなかったが、24時間では30%とcontrol群と比較し、有意に低下したが、myonecrosisを生じない1回出血7日後ではcontrol群の65%まで回復した。それに対し、2回出血モデルでは、4日目で25%とさらに低下し、7日目、14日目においても38%、43%と、aggregated rateの低下が持続していた。 2、in vitroにおける攣縮血管の蛋白合成能 電顕下に観察されたribosomeのdisaggregationが、ribosomeの機能を反映しているかを確認するために、in vitroにおける蛋白へのアミノ酸の取込み量を測定した。測定にはcontrol群とaggregated rateが最も低下している2回出血4日目の脳底動脈を用いた。Control群の蛋白へのアミノ酸の取込み量は2400dpm/mg proteinであったのに対し、2回出血4日目では1200dpm/mg proteinと有意に低下しており、電顕下に観察し得たribosomeの形態に一致した。 以上より、クモ膜下出血後の中膜平滑筋細胞において長期間にわたって蛋白合成が障害されていることを明らかにした。また、この持続する蛋白合成障害が、クモ膜下出血後の遅発性平滑筋細胞壊死を起こすものと考えられた。
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