研究概要 |
目的:腱損傷の後療法としての早期運動療法は、腱と周囲組織の癒着を予防して早期に腱の滑走を得る有効な後療法の一つである。腱の早期運動療法をさらに発展させるため、手の浅指屈筋腱のみでなく様々なヒトの腱の培養下における細胞増殖を確認し、その特性と活性の変化を明らかにする目的で実験を施行した。 方法:ヒトの浅指屈筋腱、長母指伸筋腱、長掌筋腱、長母趾屈筋腱、長趾屈筋腱、長母趾伸筋腱、長趾伸筋腱を組織培養した。3、6、9、14日目に取り出し、腱自体の細胞の動態を走査電顕、透過電顕で観察するとともに、培養の最後にthymidineの相似体である5-bromodeoxyuridine(BrdU)を含んだ培地で1時間振盪培養し、核酸合成期(S期)にある細胞の核へBrdUを取り込ませた。免疫染色によりBrdUを染色し、増殖している細胞の局在を確認するとともに、腱断端に出現した細胞のBrdU標識率を算出した。 結果:培養6日目で腱断端に細胞が確認された。細胞には線維芽細胞と思われる細胞とマクロファージと思われる細胞の2種類があり、培養9日目で細胞が増加するとともにB-rdUの標識率が有意に高くなった。また腱実質内の成熟した腱細胞も標識された。 結論:BrdUでの標識と免疫染色を用いることで、in vitroでのヒト腱細胞の増殖が、形態学的に確認され、epitenon,endotenonの細胞のみならず、成熟した腱細胞も腱の内在性修復に関与している可能性が示唆された。また、ヒトの腱の培養下での細胞増殖は培養9日目付近に活性のピークがあるものと思われた。
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