ストレス蛋白は大腸菌のような下等動物からヒトのような高等動物において、ストレス環境下にて発現し、細胞がストレスに有効に対応できるよう働いている。麻酔管理の1つの目標は、術中に患者をいかにストレスから解放するかである。この点に注目し、麻酔薬の細胞レベルでのストレス対応つまりストレス蛋白の発現と麻酔薬の新たな役割の解明を試みている。 ストレス蛋白の中で最も研究が進んでいるHeart Shock Protein 70(HSP70)を熱ショックにてよく発現するヒト子宮癌細胞HeLaを用いた。10%牛胎児血清添加RPMI 1640培地にてHeLa細胞をconfluent状態にし、我々の教室で開発した細胞麻酔装置内にて吸入麻酔薬暴露下で培養及び42℃の熱ショックを与え、in vitroのストレス環境下麻酔状態を設定した。(1)通常培養、(2)通常培養+熱ショック、(3)麻酔薬暴露下培養、(4)麻酔薬暴露下培養+熱ショックの4群に分け、各々の群より、Chomozyskyの方法を用いてtotal RNAを抽出した。ホルマリンアガロースゲル上にてRNAを電気泳動を行ったのち、ノーザントランスファーをした。現在オンコジーン社製HSP70オリゴマープローベを用いてDIG法でラベル後ハイブリダイゼーションを行っているが、良好なバンドが得られず、cDNAプローベによるハイブリダイゼーションを検討中である。cDNAの使用で良好な結果を得られれば、吸入麻酔薬の種類を変更し、麻酔薬間の差を観察する予定である。結果は来年度の日本麻酔学会にて発表したい。 同時にRehybridization法を用いて他のストレス蛋白のmRNA発現観察も検討中である。
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