【対象と方法】正常成人13名(平均33.5歳)、排尿障害のある患者12名(平均67.5歳、うち正常膀胱機能4名、神経因性膀胱患者8名)を対象とし、安静臥床開眼の状態で膀胱空虚時、最大尿意時にそれぞれ^<99m>Tc-HMPAO)を静脈注射剤し、最大尿意時における脳血流の変化を脳血流シンチグラフィー(SPECT)を用いて検討した。 【結果】安静時(膀胱空虚時)の画像と、最大尿意時のサブトラクション画像を資覚的に評価したところ、側脳室上縁を含む水平断画像において最大尿意時に前頭葉の脳血流が増加する傾向を認めた。そこで側脳室上縁を含む水平断画像で、ド-ナツ型30°ずつ12分割した関心領域を設定し、その関心領域別に平均カウントを求めた。また安静時と比較した最大尿意時における局所脳血流量の変化率を算出するために小脳が最も大きく認められる水平断画像から小脳全体に設定した平均カウントを求め、安静時と最大尿意時でそれぞれ小脳に対する各関心領域の血流比を算出した。小脳に対する関心領域別の変化率を最大尿意時における局所脳血流の変化率とした。Wilcoxon検定にて統計解析を行ったところ、正常成人13名において最大尿意時に中前頭回を含む前頭葉の領域で有意に脳血流の増加を認めた(右は危険率1%未満、左は危険率5%未満)。今回検討した症例では、正常成人と神経因性膀胱患者との間に明らかな違いはみられなかった。 【結論】SPECTによる検討の結果、最大尿意時に前頭葉の一部(特に中前頭回付近)において安静時と比べて有意な脳血流の増加を認めた。以上の結果から、尿意の自覚あるいは排尿の抑制の際に前頭葉の一部が活動しているものと推察された。
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