研究概要 |
1.シグナル配列決定法によるスクリーニング マウス精巣より分画した精母細胞からRNAを抽出しcDNAを合成した。5000種類のcDNAをシグナル配列単離法を用いてスクリーニングしたところ,10種類の未知の遺伝子断片及び2種類の既知の遺伝子断片が得られた.既知の遺伝子はIII型グルコース受容体及び機能の同定されていない精巣特異的遺伝子(testis specific protein X)であった. 2.未知の遺伝子の解析 未知の遺伝子をプローブとして,これらを発現している細胞をノーザーン法により解析した.2種類のクローンKH23,KH42は生殖細胞特異的に発現し,その発現量が生殖細胞の各分化段階で変化することが確認された.さらにin situ hybridization解析の結果,両クローンは,精巣組織内で精母細胞及び円型精子細胞特異的に発現していることが確認された.以上の結果より,両遺伝子は精子形成に関与することが示唆された.KH42はアミノ酸配列で分泌型トリプシン阻害物質に高い相同性を認め,分化に伴う生殖細胞の移動及び周囲組織の再構築に関与する可能性が考えられる.KH23もシグナル配列を有し分泌型蛋白質をコードしていることが推測されるが,既知の遺伝子との相同性は低い.以上,本研究により今までに生殖細胞特異的な未知の遺伝子を2種類単離した.現在これらの分泌蛋白質の標的となる細胞を同定し精子形成における機能,生物学的意義を検討している.
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