これまでヒト精巣中のレニンの局在は免疫組織化学的手法でのみ確認されており、厳密にはそこでの産生を証明してはいなかったので、まずRT-PCR法を用いてヒト精巣でのレニンの産生を証明した。次にヒトおよびマウスにおけるレニンおよびACEの精巣内での局在を、In situ hybridization法(ISH)を用いて証明した。ヒト精巣組織は前立腺癌患者の摘除精巣を用い、プローベとしては[^<35>S]UTPでラベルしたアンチセンスcRNAを用いた。同プローベを用いてpositive controlとしてヒト腎皮質の傍糸球体装置に一致するレニンの陽性シグナルを確認した。次に、ヒト精巣において間質のライディッヒ細胞に一致してレニンのシグナルを確認した。またマウス精巣において精細管内に均一にACEの陽性シグナルを確認した。ヒト精巣内のACEに関してはまだ局在を決定していないが、おそらく精細管内と考えている。レニン-アンギオテンシン系での生理活性物質であるアンギオテンシンII(AII)は、ACEの局在部位で産生された後、移動することが考えられるのでその局在を検討するよりもAIIreceptorの局在決定が重要と考える。現在、精巣組織を精細管と間質に完全に分画化培養することに着手しており、それが可能となればそれぞれの画分ごとに上清中のAIIを測定したり、RT-PCR法を用いてAIIreceptorの発現の有無を調べる予定である。
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