研究概要 |
われわれは,健常人の尿から高純度なヘパラン硫酸分画を得ている。この分画には,酸性ムコ多糖類としては,ヘパラン硫酸のみを含み,少量の蛋白を含有していた。これを生理食塩水で溶解しFreund complete adjuvant(GIBCO Lab.)とミセル化し,BALB/cマウスに免疫し,KoehlerとMilsteinの方法に準じてマウス骨髄腫細胞NS/lと細胞融合を行った。第1次スクリーニングとして,ニトロセルロース膜を用いたDot imumoblottingを行い,免疫した抗原と反応するものを陽性とした。第2次スクリーニングとして間接蛍光抗体法を行い,正常腎糸球体が染色されるものを陽性とした。 得られたモノクローナル抗体はIgMκtypeで,間接蛍光抗体法では健常腎組織の糸球体上皮細胞および血管壁が染色された。ラット腎組織でも同様の染色性であった。ラット小腸,心筋組織も染色された。PLP固定したラット腎を用いた免疫電顕では,糸球体上皮細胞が瀰慢性に染色された。粗製抗原を用いたWestern blot解析で,分子量約29000のバンドが描出された。 以上より,我々が得たモノクローナル抗体は,ヘパラン硫酸ではなく,免疫した抗原に含まれる微量の蛋白に対する抗体であることが推測された。この蛋白は,ヘパラン硫酸プロテオグリカンの蛋白成分の一部であるか,もしくは糸球体上皮細胞および血管壁に存在する未知の蛋白である可能性が示唆された。
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