研究概要 |
成熟ラット(8〜10週齢)を開腹後子宮を摘出し、平滑筋組織を酵素処理して子宮平滑筋細胞を単離した。最初単離した筋細胞は1〜2週間の培養にて単層に合流した。この単層の筋細胞を用いて、細胞外液を電気生理学用の標準煤液(Tyroid solution)に交換し、細胞膜に微小ガラス電極でホールセルクランプを行った。そして、電気刺激装置により細胞膜の興奮しない過分極に静止電位を変化させ、その結果生じる細胞内向き電流からオームの法則に従ってホールセルクランプ用増幅器で細胞入力抵抗(Ro)を測定した。Roは標準煤液にβ刺激剤であるisoproterenolや細胞内cAMP濃度を上昇させることが知られているdibutyryl cAMP、forskolinの添加によりいずれも有意に上昇した。さらに、細胞外液をTyroid solutionにて洗浄後Roを測定すると薬剤投与前のそれぞれの値にほぼ可逆的に戻った。これらの薬剤によるRoの上昇は子宮筋細胞間の電気的結合が可逆的に減少したことを示しており、ギャップ結合の透過性が抑制されたことを示唆している。以上より、臨床的に子宮収縮抑制剤として応用されているβ刺激剤の幾つか(terbutalin,ritodrine)にも、同様の機序が子宮収縮の抑制に重要に関与していることが推測された。
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