研究概要 |
インヒビンのTumor Suppressorとしての意義を明らかにするために卵巣腫瘍の患者の血清を集めてその特徴をみるとまだ検体数が少ないので結論はでないが良性腫瘍や悪性腫瘍で頻度の高い漿液性腺癌では高値はとらない傾向だが少数のムチン性腺癌では高値を示すことがある。現在症例を重ねて検討中で、結論はでていない。また、CA125産生性卵巣腫瘍Cell lineを用いてインヒビン、アクチビン、フォリスタチンによりその産生量の変動を測定したが明確な変化は認められなかった。今後は別のCell lineを用いて同様の実験を試行する必要がある。 絨毛細胞の初代培養系において妊娠経過によって胎盤からのインヒビン分泌は初期には高値を示しその後低下する傾向にあるが、フォリスタチン、アクチビンの添加によるインヒビン分泌量の制御は確認されなかった。しかし妊娠中期の胎盤における変化については中期の胎盤を得るのが困難なためさらに検体数を重ねて検討する必要がある。当教室が中心になって行ったインヒビンのIRMA法測定による妊婦血中インヒビンレベルをみると、妊娠中毒症例においてインヒビン高値例が多い(まもなく発表予定)ので今後妊娠中毒症の発症や予後に関して妊娠中期のインヒビン制御機構の解明が重要視されると思われる。IGF-I,IIの絨毛細胞培養系のインヒビン分泌に対する影響は妊娠末期胎盤を用いると認められないが、妊娠初期絨毛を用いるとインヒビン分泌に促進的に働く場合、変化を認めない場合と一定しなかった。個体発生に大きく影響するIGF蛋白は妊娠初期をさらに細かく妊娠の週単位で細分化する必要があるので現在検討中であり、さらにIGF結合蛋白との関連も明確にする予定である。
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