近年グルコース輸送を担う担体(グルコーストランスポーター、以下GLUT)の蛋白構造が決定され、分子生物学的手法を用いて、その蛋白量のみならず遺伝子レベルの解析が可能となった。胎盤は母子間の物質輸送にとって重要な臓器であり、中でもグルコースは胎児のエネルギー源として最も重要である。胎盤はGLUTを始め、種々の担体を発現するが、その制御は不明なことが多い。 今回の研究の目的は、胎盤におけるGLUTの妊娠週数に伴うその蛋白・mRNAレベルの変動と、その局在の変化を明らかにすることであった。GLUT1蛋白、mRNAレベルは、妊娠週数に伴い増加することを、結合実験、ウエスタンブロット解析、ノザンブロット解析により明らかにした。また、GLUT3mRNAレベルは、逆に妊娠週数に伴い減少することをノザンブロット解析により明らかにした。初期胎盤のGLUT結合量は、糖尿病合併症では、対照に比し有意な差は認められなかった。これらの結果は、国内学会で発表の上European Journal of Endoc rinologyに発表予定である。GLUT1は、主にsyncytiotrophoblastに局在することを免疫組織染色を用いて明らかにした。またGLUT1は、妊娠初期にapical membraneに発現し、妊娠中、後期には、basal membraneに発現していた。またGLUT3は主にcytotrophoblastに局在し、妊娠初期に主にその発現がみられることを明かにした。この胎盤のGLUT1、3の局在の妊娠週数に伴う変化は、初めての知見で、国内学会発表の後、英文誌に投稿中である。
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