昨年度までの研究で、抗子宮頸部腺癌モリクローナル抗体1C5の有用性について発表し、1C5がB-カゼインの1-28番のアミノ酸と共通抗原決定基を認識する事を証明した。 本年度は臨床上での症例数を増加させ細胞診断上での有用性についてさらなる検討を加えた。これは平成7年の日本臨床細胞学会春期総会のシンポジウムで発表予定である。また、認識抗原の解析と血清診断での応用を目的として、B-カゼインでウサギを免疫して得られた抗B-カゼイン抗体を作製し、ヒト婦人科領域の正常臓器・悪性腫瘍でのその応性を検討した。尿素存在下での電気泳動後のイムノブロットでは抗B-カゼイン抗体はB-カゼインと子宮頸部腺癌細胞株で異なる分子量での反応を認めた。免疫組織学的には子宮頸部腺癌7例中6例、子宮頸部扁平上皮癌6例中4例、子宮内膜癌5例中4例に反応を認めた。さらに子宮頚部での扁平上皮癌と腺癌の共通発生母地と考えられているreserve cellでの反応が認められた。これらより、1C5認識抗原はB-カゼインと共通抗原決定基を持つが、腫瘍組織にはその他にもB-カゼインと共通する抗原性が存在すると考えられる。(第53回日本癌学会総会で発表)この事はβ-カゼインの抗原性の解析が、癌化における細胞内物質の変化の解析に結びつき、さらには新しい腫瘍マーカーの確立をもたらす可能性を示唆する。現在、この他の抗原性を解析するために、ペプチドを合成し解析するとともに、B-カゼインに対するモノクローナル抗体を作製中である。
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