はじめに、当初予定していた炎症細胞上のニューロペプタイドレセプター数の直接的測定に関しては、実際には手技上の問題等にて、現時点では詳細な解析に耐えうる精度が得られないと判断したため中断し、Substance P(SP)等のニューロペプタイドがI型アレルギーに際して実際に炎症細胞に対してレセプターを介して作用しているかどうかを確認するために、以下の如き検討を行なった。すなわち、鼻アレルギー患者及び正常者の末梢血中好酸球、好中球膜表面上の、1)Adhesion molecule(LFA-1、Mac-1、VLA-4)の発現及び、2)好酸球自体の活性化(EG2陽性率)に対するSPの作用につき検討した。SPは10-8〜10-4M、30min、incubation及び10-7Mにて30、60、120min、incubationにて検討した。また、Adhesion moleculeの発現はFlow cytometryにて、EG2陽性率は免疫染色にて測定した。結果は1)では、アレルギー患者群、正常者群共に各Adhesion moleculeの発現にいずれのSP dose、incnbation timeにても有意な変化は認められなかった。ただ、同様に好中球をSPにて刺激した際にSP10-4Mという高濃度刺激時のみMac-1の発現に増強が見られた。 2)においても、SP刺激による活性化好酸球の有意な増加は、アレルギー患者、正常者いずれの群においても認められなかった。 以上の如く、今回施行した実験結果はいずれもnegative dataであったため、研究発表や著作へは直接的には結びつかなかったが、ニューロペプタイドの分子生物学的解析のさらなる発展のためにも意義のある研究であったと考えられる。
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