研究概要 |
進行性鼻壊疸は鼻腔から咽頭にかけて発生する、進行性の壊死性病変であり、組織学的検索のみでは確定診断が得られないことが多く、長期にわたって診断がつかないまま経過観察されたり、ウェジェナ-肉芽腫症と診断され治療されることがある。我々はその早期診断を目的として免疫組織学的、免疫遺伝子学的にその腫瘍細胞の起源の検索を行った。また、Epstein-Barr virus(EBV)との関連も検索した。 症例は2例で、鼻咽頭原発の浸潤破壊性病変を有し、臨床的に進行性鼻壊疸と診断された。病理組織学的にはともに壊死を伴う異型細胞の増殖が見られ、非ホジキンリンパ腫(large cell,immunoblastic polymorphous)と診断された。表面形質の検索では、CD2^+,cytoplasmic CD3_ε^+,CD3_ε δ or ε γ ,CD4,CD8,CD45RO^+,CD56^+であった。B細胞マーカーは陰性であった。T細胞受容体β鎖遺伝子の再構成は2例とも認められなかった。また、2例ともに単クローン性のEBVゲノムが検出され、PCR法により2例とも1型のEBVが検出された。 今回検索した症例は、多くのT細胞抗原の喪失とnatural killer(NK)細胞抗原(CD56)の発現を有する末梢性T細胞性リンパ腫、またはNK細胞起源の腫瘍と考えられた。T細胞受容体遺伝子の再構成が見られなかったことは後者を示唆する所見と考えられた。また、本症の発生にはEBVが強く関与していることが確認された。上記の事項を検索することによりより早期に進行性鼻壊疸の診断をつけることが可能になり、早期治療の助けになると考えられる。
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