水平半規管の姿勢制御機能を調べる目的で、ウサギ18羽を用い実験を行った。右水平半規管のリンパ流を手術により遮断した。このウサギに水平回転刺激を加えることで、手術を行っていない例の水平半規管のみにリンパ流が生じ、向膨大部流と反膨大部流の効果を別々に評価し、Ewaldの法則の再検討を行った。また、それぞれの効果が姿勢にどの様な影響をおよぼすか、水平回転時の姿勢の変化を調べた。 右水平半規管を遮断したウサギを、1Hzで、90°の振子様の水平回転刺激を加え、この時の眼振を電気眼振計にて記録を行った。その結果、左水平半規管で向膨大部流がおこっている時は左向き眼振を認めるが、右向き眼振を認めないものが9例、左向き眼振に比べ、右向き眼振の緩徐相速度が遅いものが9例あり、その逆は認めなかった。この結果より、水平回転刺激により眼振に及ぼす影響は、向膨大部流が反膨大部流に比べ効果的であり、Ewaldの法則を満たす結果であった。 このウサギを用い、水平回転台の上に乗せ20秒10回転のバラニ-回転を行い、回転中ならびに回転を急に停止した時の姿勢に起こる変化を左右の回転で比較した。左回転中は頭振が出現し姿勢を保つことができたが、回転を停止させると頭振は出現しないかあっても弱く、頭部・躯幹ともに右へ傾く様に偏するか右へ転倒する傾向がみられた。右回転中は頭振はおこらないかあっても弱く、頭部・躯幹は右側へ傾く様に偏するか、右へ転倒する傾向がみられた。回転を停止させると、眼振が出現し、偏した頭部・躯幹が立ち直る傾向がみられた。 この結果より、向膨大部流が反膨大部流に比べ姿勢制御に有効に働いているといえ、姿勢制御についてもEwaldの法則が成り立つと考えられた。
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