近年、網膜に特異的に発現されるロドプシン、ペリフェリン遺伝子の突然変異が網膜色素変性症の原因となりうることが示唆されている。しかしながら、それらは、色素変性症ごく一部を説明するに過ぎず、大多数の症例については、まだ知られていない他の原因遺伝子が存在すると考えられる。我々は、網膜色素変性症の原因遺伝子の候補として、視サイクルに関与する酵素の一つである網膜色素上皮細胞特異的レチノール脱水素酵素(11-シス特異的レチノール脱水素酵素)に注目し、網膜色素変性症の患者の中に、本酵素遺伝子に突然変異を持つものがあるかどうか調べることを計画した。 ウシ網膜色素上皮細胞特異的レチノール脱水素酵素は、鈴木らによって精製されたが、その遺伝子配列はこれまで決定されていなかった。我々は、バクテリオファージベクターUNIZAPで作製されたウシ網膜cDNAライブラリーを、抗ウシ網膜色素上皮細胞特異的レチノール脱水素酵素抗体でスクリーニングし、ウシ網膜色素上皮特異的レチノール脱水素酵素cDNAクローンを単離した。単離したバクテリオファージ中のcDNAをインビトロエクシジョンによって、プラスミドベクターpBluescriptに移し、クローンを増幅した。それぞれのクローンからcDNAを抽出し、制限酵素地図を作製した。3つのクローンは互いに重なり合っており、最も長いcDNAを持つもの(PEBS5)をいくつかのDNA断片に分けてサブクローニングを行った。これらのDNA断片の塩基配列をオートシークエンサーを用いてジデオキシ法で決定した。このようにして決定されたcDNA配列がウシ網膜色素上皮特異的レチノール脱水素酵素のアミノ酸配列と一致することを確かめるために、現在ウシ網膜色素上皮特異的レチノール脱水素酵素を、DEAEセファロース、ハイドロキシアパタイトを用いたゲルクロマトグラフィーで精製している段階である。
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