研究概要 |
水晶体に張力を加えると、水晶体のわずかな散乱の増加し、レーザー動的光散乱において拡散係数が0に近ずく。(特に皮質部で)このことから水晶体ゲルが張力によって臨界現象を生じていることがわかった。そして人工の合成ゲルでは相転移点にちかずくと屈折率の低下が見られる。これらin vitroの実験結果から人の水晶体においても調節弛緩時すなはち水晶体がチン氏帯によって引っぱられているときその内部の屈折率は低下していることが考えられる。ゲルの状態で考えると、調節時は相転移点からはなれた安定したゲルの状態となる。そして屈折率は比較的高くなる。また調節弛緩時は、チン氏帯の緊張により水晶体ゲルが圧力を受け、ゲルの網目の間の相互作用が起こり、特に皮質の部分が相転移点に近つせいて屈折率が低下すると考えられる。調節弛緩時の水晶体の前面に曲率半径をR1=10mm,後面の曲率半径をR2=6mm,水晶体全体の屈折率を1.413と考えると調節時のR1=6mm,R2=5.5mm,水晶体全体の屈折率1.424という値が必要となり人工のゲルで臨界現象として0.01-0.02程度の屈折率の差が生じたことによく当てはまる。また光散乱の結果から水晶体ゲルの臨界現象は特に皮質で著名であったことから実際の屈折率分布を持った水晶体を考えた場合より調節時にその屈折率の差を大きくして合目的であると考えられる。 以上をまとめると、相転移を生じたときの屈折率の変化から相転移点に近づいた時の臨界現象としての屈折率の低下が嚢内調節に関与する可能性が示された。こんご実際に動的光散乱をin vivoで測定しこのことを実際に証明する準備を行っている。
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