研究概要 |
各種の網膜変性と、網膜に特異的に発現する遺伝子異常との関係が明かにされつつある。しかしロドプシン遺伝子異常、ペリフェリン/RDS遺伝子異常などをあわせても網膜変性の原因のごく一部しか説明できない。網膜変性においては候補遺伝子アプローチが成功をおさめてきた。我々は、すでに解析してきたロドプシン、ペリフェリンRDS、ホスデューシン、β-cGMP-PDEに加えて、最近クローニングされた新しい候補遺伝子であるRom-1,リカバリン(S-モジュリン)、アレスチンについて、PCR(polymerase chain reaction)法によって各エクソンを増幅し、SSCP(single strandconformation polymorphism)法によって変異の有無を検討した。まだ検討した網膜変性の症例数は少ないが、今のところRom-1、リカバリン、アレスチンに変異を認めていない。 今のところすでに報告した常染色体優性網膜色素変性(ADRP)患者に認めたロドプシン遺伝子のコドン347の異常、コドン17の異常に加えて、常染色体劣性網膜色素変性2家系に、ロドプシン遺伝子のコドン174にGGCからAGCへの変異を認めたが、家系調査から疾患と連鎖しなかった。また区画型のADRPにコドン15の変異を認めた。 以上のように解析するに従って網膜変性の原因の全貌を明らかにすることの困難さがわかってきた。今回のような候補遺伝子をみていくことは、大家系を調査することの困難な本邦においては選択しやすい方法であるが、労力の割に疾患と連鎖する変異をみつけることは難しい。一方、連鎖分析によってまずその家系がどの遺伝子の異常によるものか検討することも考えられるが、本邦では解析できる家系を集めることはなかなか難しいと考えられる。したがって、今後は検索する網膜変性の症例の幅を広げるばかりでなく、もっと効率よく変異の検索のできる方法も考えていかなければならないと考える。
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