多発性硬化症(MS)の脱髄病巣形成過程に血管病変が一次的に関与している可能性が注目されており、これに関連して、MSならびにその実験モデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の中枢神経系の血管内皮細胞において、様々な免疫学的特性が報告されている。本研究は、活動期のMSに網膜血管炎、ぶどう膜炎が合併しやすい点に着目し、急性EAEにおいて、標的組織であるミエリンが存在しない網膜、ぶどう膜の血管内皮細胞に免疫学的特性を解析するものである。 Lewisラット10匹の腹腔内にモルモット脊髄ホモジネート、complete Freund's adjuvant、Bordetella pertussisを投与しEAEを発症させた。全身神経学的徴候出現後、眼球、視神経、中枢神経系を摘出し、snap frozenにて凍結切片を作成し、以下の方法にて血管内皮細胞の免疫組織化学を行った。1次抗体は、OX3(anti-rat Ia polymorphic determinant)、OX6(anti-rat Ia common determinant)、OX1(anti-rat leukocyte common antigen)、ED-1(anti-rat macrophage)、Anti-von Willebrand factor、Anti-GFAPを使用し、ABC systemで反応させ、AECで発色させた。網膜血管は、20眼中12眼にOX3陽性、7眼にOX6陽性を示した。虹彩血管は全例で0X3、OX6共に陽性であった。毛様体血管の1部にも陽性所見が認められたが、脈絡膜血管には有意な所見は得られなかった。 本年度は、まず、EAEの網膜、ぶどう膜の血管内皮細胞が抗原提示細胞の特性を有しているかを評価したが、続いて、以上のIa陽性の血管内皮細胞において、ICAM-1、VCAM-1、CD44、ELAM-1などの接着分子の発現の有無を連続切片を用いて現在検索中である。
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