1.はじめに 眼への電流刺激により網膜細胞を刺激するという原理を用いた眼疾患検査手法の実現には、その刺激作用の情報、すなわち通電量と網膜各位置を流れる電流量との関係、通電用電極の装着位置あるいは透光体混濁など眼の状態が変化した場合の刺激電流の変容、眼周辺部の神経・筋系への副作用の有無、などの情報が必要である。本研究では、電流刺激時の眼付近の電流量を推定し、これを使用して上記の刺激作用について論じた。 2.実施方法 電流刺激時の眼付近の電流量の推定をおこなう解析システムを作成し、刺激作用を論じるに必要な計算結果を得た。計算結果および細胞の電気的特性に基づき、刺激作用について論じた。 (1)解析システムは、大型計算機にパソコンを端末接続した構成とした。 (2)数値計算アルゴリズムとして有限要素法を適用した。透光体混濁時の電気定数変更が可能な眼球モデルを作成した。 (3)眼周辺部および網膜への刺激作用について論じた。 (4)推定結果を整理した。すなわち、電流刺激分布を画像としてあらわした。 (5)解析システムの改良余地および磁気刺激手法の刺激作用解析への応用可能性について検討した。 3.得られた知見および今後への課題 本研究によって、眼への電流刺激時における眼周辺部および網膜への刺激作用について考察することができた。電流刺激により透光体混濁時においても網膜刺激が可能であることがわかった。電流刺激の副作用すなわち刺激用電極付近の神経・筋系への刺激作用およびジュール熱発生作用については、網膜刺激のために設定する刺激電流値程度では問題とはならないと推定された。本研究で得られた成果は、磁気刺激手法への適用も可能である。今後、磁気刺激作用についての検討をすすめる計画である。
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