口腔領域の癌は外科手術により高度の顔面の変形を来し、審美性の面で大きな問題を残し、また術前、術後の放射線療法や化学療法は、その副作用のため、術後の患者の「Quality of Life」という点で大きなハンディキャップをのこす。したがって外科手術による切除範囲を極力小さくするために術前の癌組織の発育を最小限に抑え、かつ術後の残存癌細胞の増殖を抑制するような新たな癌の治療法として、癌細胞の特異抗原に反応するモノクロナール抗体による免疫療法が注目を浴びている。 本研究の遂行に必要な癌細胞株を我々はすでに樹立し、MISK81-5と命名し、Japanease Journal of Cancer Researchニ論文発表した。この細胞株からさらにヌードマウス皮下における造腫瘍能の高いサブクローン(sMISK)を得た。sMISKを抗原とし、マウス脾臓より取り出したリンパ球と混合培養し、対外免疫法により感作させたのち、マウスミエローマ細胞(NS-1)と融合させ、抗体を産生するクローンを数種類得た。現在はこれらの抗体と、抗原とした細胞株との反応性を検討しており、今後は強い反応性を有するクローンを選択し、ヌードマウス皮下に移植された癌細胞の造腫瘍に対する抑制効果の有無を検討する予定である。さらに正常マウスの舌に同所性移植を行なったのち、反応性の腫大を示すリンパ節より取り出したリンパ球についても同様の実験を行なう予定である。
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