唾液腺腺様嚢胞癌(ACC)に対してTdT-mediated dUTP-biotin nick end labeling(TUNEL)染色、BM-1、bc1-2、HSP70抗体による免疫染色を施し、ACCの組織型とapoptosisの関連を検討した。 【結果】TUNEL、BM-1では、BM-1がTUNELより広範囲に陽性像を呈していたが、両者はtubularやglandular patternがsolid patternより強く反応する傾向を示した。また、腫瘍に隣接する正常または萎縮した唾液腺もBM-1によく反応していた。bc1-2ではsolid patternによく反応し、腫瘍辺縁部の増殖部と考えられるtubular、trabecular patternでも陽性を呈する症例が多かった。さらに、間質に浸潤しているリンパ球にも陽性のものが認められた。HSP70は、tubular、glandular patternがsolid patternよりよく反応していた。また、腫瘍周辺の唾液腺にも陽性がみられた。 【考察】以上の結果は、ACCにおいて、概して、悪性の強い組織亜型であるsolid patternより悪性度が軽度なtubular、glandular patternでapoptosisが高頻度に起こっており、腫瘍の生物学的性格に関連していることを示している。しかしながら、腫瘍辺縁の増殖部のtubular、trabecular patternでbc1-2の発現があり、この部位ではapoptosisは抑制されていることが考えられる。また、HSP70はapoptosisが起こっている部位に一致して発現しており、HSP70がapoptosisに関連していることが示唆された。腫瘍に隣接した正常組織・炎症性浸潤細胞でのapoptosisの発現や抑制がみられたため、apoptosisを腫瘍自体の性質としてだけでなく、宿主との相互作用や腫瘍免疫の観点からも検討していかなければならない。これらを解明するためには超微形態の観察も必要である。 なお、他の唾液腺腫瘍についても同様の手法で現在検討中である。
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