研究概要 |
1.研究目的 マウスの様々な発生段階にある臼歯歯胚を用いて、象牙質形成においてTGF-β1およびtype I collagenにおける遺伝子発現と蛋白の合成との関連性を解明する。 2.研究方法 (1)材料と方法 胎生13日から生後7日のDDYマウスを4%paraformaldehydeで固定し、0.1M EDTAで脱灰後、パラフィン包埋した。マウスTGF-β1(全翻訳領域を含む1,600bp)およびラットtype I collagen(c末non-herikal領域)のcDNAを用いて、野村(1988)の方法によりRNA probeを作製し、in situ hybridizationを行った。免疫組織化学においては抗ヒトTGF-β1抗体および抗ラットtype I collagen抗体を用いた。 3.研究結果 遺伝子発現においてTGF-β1のsignalは、bud stage初期ではエナメル器および歯乳頭に出現し、cap stage初期ではエナメル器および歯乳頭に歯の形成過程を通して最も強い発現が観察された。bell stage初期では前象牙細胞や象牙芽細胞に強いsignalが見られた。type I collagenのsignalはcap stage初期から中期では歯乳頭に見られなかったが歯小嚢ではこの時期にわずかに見られた。cap stage後期から歯乳頭にsignalが見られ始め、bell stageになると前象牙芽細胞および象牙芽細胞に著しいsignalが見られた。蛋白の局在においてTGF-β1はbell stage中期では咬頭頂の象牙芽細胞および象牙前質に強い反応が認められ、bell stage後期では前象牙芽細胞および歯乳頭細胞に強い反応が認められた。type I collagenでは、bell stage中期では咬頭頂の象牙芽細胞および歯乳頭細胞に反応が認められ、bell stage後期の歯乳頭細胞には強い反応が認められた。 4.結論 歯の発生過程で、TGF-β1の遺伝子発現はtype I collagenに較べ早い時期の歯胚に見られた。TGF-β1は歯乳頭、歯小嚢を構成する細胞の増殖分化、組織の形態形成や硬組織基質合成に密接な関連性を持つことが強く示唆された。
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