研究概要 |
脳幹レベルでの摂食飲水行動の調節について調べるために、当初、最後野のグルコース応答性ニューロンについてスライスパッチクランプ法を用いて調べる予定であったが、細胞の大きさや数などの点で有利な近接の孤束核ニューロンからの記録を行った。孤束核と最後野は密な線維連絡を持ち、共に内臓感覚の一次求心路が投射している部位としてよく知られている。本実験では孤束核ニューロンの浸透圧応答性について、最後野からの入力がある場合とない場合とで比較検討した。 これによると、孤束核ニューロンは直接電気刺激によってタイプ1、2、3の三種類の発火パターンに分類できた。記録した42ニューロン中、10ニューロンがNaClによる浸透圧増加とsucroseによる浸透圧増加の両方に対して放電頻度の増加を示した。また1ニューロンが両方の浸透圧増加にたいして放電頻度の減少を示した。残りの31ニューロンは浸透圧刺激に対して何の応答も示さなかった。浸透圧応答性を示した11ニューロン中4ニューロンは[Ca^<2+>]free,high[Mg^<2+>]の条件下にて同様の実験を行った。いわゆるシナプスを遮断した状態で、3ニューロンは浸透圧応答性を保ち、1ニューロンは浸透圧応答性を失った。つまり、孤束核にはそれ自身が浸透圧受容性を持つものが存在することが明らかとなった。浸透圧応答性を失った1ニューロンはおそらく最後野からの入力を受けていたものと考えられた。従来から浸透圧あるいはNa受容性と言われてきた孤束核ニューロンは正に浸透圧受容性であることが明らかとなった。浸透圧応答性ニューロンはタイプ1、2に属するもののみで、特にタイプ2のものの中に多く見られた。浸透圧刺激に対する孤束核の浸透圧受容性ニューロンの応答は膜電位変化を伴っており、今後は膜電流の解析も行い、浸透圧応答性ニューロンの膜特性を解明していき、これらを最後野ニューロンにも応用していく予定である。
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