イソプロテレノール(IPR)によるラット耳下腺組織切片の前処理時間の違いによって惹起されるこの切片からのアミラーゼ分泌のSupersensitivity(S)からDesensitization(D)への逆転現象を実験系として用いて、GTP結合(G)蛋白質の情報転換因子としての役割とその機能の調節機構を追及し、下記の成果を得た。 Pertussis toxin(IAP)による耳下腺Gi蛋白質のADP-リボシル化(A-R)能は対照に比してS時には60%低下しており、逆にD時には40%増加していた。一方、Gs蛋白質のコレラ毒素によるA-R能はS及びDには全く無関係であった。耳下腺細胞膜の膜蛋白質Protein kinase A(PKA)リン酸化するとS時にみられるA-R能の低下は影響を受けなかったが、D時にみられるこの増強は全く認められなかった。またアルカリホスファターゼでこの膜蛋白質を脱りん酸化すると、IAPのA-R能は脱りん酸化の程度に応じて増加した。Protein phosphatase 1あるいは2Aを阻害する濃度の0.1μMオカダ酸で処理した耳下腺切片を用いて上記の実験を行うと、Sは50%増強され、IAPによるGi蛋白質のA-R能の低下は一層強く認められた。またDは完全に消失し、IAPによるGi蛋白質のA-R能の増強は全く認められなかった。[γ-^<32>P]ATPから^<32>PはAS/7を用いて免疫沈降されたGi蛋白質にPKAによって転移された。 従って、Gi蛋白質がIPRに対する耳下腺の分泌応答に重要な役割を果たしており、きの蛋白質のりん酸化レベルの調節がこの機能の調節に極めて重要であることが明らかにされた。
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