Porphyromonas gingivalisは成人性歯周炎の主要な病原菌と考えられており、本菌の産生するgly-propeptidaseはcollagenaseと共役して結合組織の重要な繊維成分であるtype I collageneを分解し得ることから、病原性に与える役割の解明が期待されている。そこで、本研究ではgly-pro peptidase遺伝子に変異を導入し、機能を欠損したmutantを作製することにより、病原性に与える影響の検討を試みることにした。 変異導入部位を決定するために、gly-pro peptidase遺伝子の全塩基配列解読データと遺伝子データベースとのホモロジー検索を行った。その結果、Human、Mouse、Ratのセリンプロテアーゼであるdipeptidyl peptidase IV mRNAに由来する塩基配列との間に高いホモロジーを有する領域が複数箇所認められた。それらのpeptidaseにおいて活性中心を形成するセリン、アスパラギン酸、ヒスチジンの各残基が、同様に共通配列中に見出されたことにより、本酵素もセリンプロテアーゼであることが示され、さらに変異を導入する部位が決定された。 gly-pro peptidase欠損変異株作製のための形質転換法としては、接合法と比較して形質転換体の遺伝的な安定性が高いと考えられるエレクトロポレーション法を検討している。しかし、本菌は制限修飾が厳しく、異種株に由来するDNAを供与しても形質転換体を得ることができなかった。そこで現在、供与DNAの由来に依存することなく形質転換体を得るために、in vitroの修飾法を検討している。
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