研究概要 |
頭頚部におけるがんのほとんどは扁平上皮がんであり、これらの治療に際しては手術療法の他、放射線療法、化学療法、温熱療法が単独あるいは併用されている。しかしながら保存的療法といえる放射線等に対する腫瘍感受性のメカニズムについての分子生物学的研究はさほど進んでいないのが現状である。その中で、近年の腫瘍学におけるトピックスの一つとしてp21(waf1/cip1/sdi1)に関する諸研究があげられる。このタンパク質はp53により発現誘導され、Cdk2またはcyclin DとCdk4複合体に結合し、G1 cyclinとCdk複合体酵素の活性を抑制すること、また細胞の老化に伴い増加してくることがあきらかにされており、腫瘍感受性においても大きな役割を果たしていると思われる。我々は、頭頚部扁平上皮がん細胞株を用い、CBDCA(carboplatin)感受性とp53,p21の発現に関する検討を行い以下のことを明らかにした。 使用した細胞はHSC2,HSC3,HSC4,Ca922,KBでありCBDCAを様々な濃度で作用させた。 1.CBDCAは頭頚部扁平上皮がんに対して増殖を抑制し、細胞死を惹起する事ができた。細胞死に際して形態的あるいは分子生物学的にDNA fragmentationが認められた。 2.最も感受性の高かったHSC3ではCBDCAによりp21の転写が活性化されたがp53転写は増強されず従来の報告とは異なった活性化経路の存在が示唆された。 3.CBDCA処理によりCa9-22,KBにてp53の転写が増強した。両細胞では同時にp21転写も増強されていたがp53のmutationおよびHPV18の存在を考慮すると、ここにおいてもp53 independentなp21活性経路が予想された。 4.p16はKBにおいてのみCBDCA処理により転写が増強した。
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