口腔領域の自己免疫疾患のうち唾液線が障害されるシェ-グレン症候群に注目し、この発症メカニズムを解明するために、病巣に浸潤したT細胞を詳細に解析した。従来より、病巣に浸潤しているT細胞のサブセットおよびその局在について、さらに分子生物学的手法であるPCR(Polymcrase Chain Reaction)法により病巣中に多く存在するT細胞レセプターのα鎖とβ鎖のレパトアを同定し報告してきた。これらの結果から、病巣に浸潤しているT細胞のoligoclonalityが証明され、T細胞が認識する特定の標的抗原が存在していることが考えられた。しかし、T細胞レセプターの抗原結合部位(CDR3)の同定を分子生物学的アプローチにより試みたが特定のCDR3の同定はできず、病巣内のT細胞を増殖させクローン化することが必要であると考えられた。 今回、発症に重要な役割を持つT細胞のT細胞レセプター、さらにはその標的抗原を同定するために、病巣内のT細胞をallogeneicな末梢血巣核球とIL-2の存在下で増殖させ、限界希釈法によりT細胞クローンを樹立した。樹立できたT細胞クローンの大部分はCD4陽性のT細胞であり、CD8陽性のT細胞は少数であった。PCR法によりサイトカインの産生を検討したところ、Th1とTh0タイプのT細胞が大部分で、Th2タイプのT細胞は少数であった。また病期が進んだ一部の患者では、Th1とTh0タイプのT細胞に加えて、Th2タイプのT細胞クローンも多く得られた。これらのことより、発症にはTh1とTh0タイプのT細胞が重要な役割を果たしていることが示唆され、今後はこのCD4陽性のTh1とTh0タイプのT細胞に注目して、T細胞レセプターや認識抗原などの解析を続けていく予定である。 本研究がさらに進めば、シェ-グレン症候群の発症に重要な役割を持つT細胞が同定でき、今後、動物モデルで試みられているペプチドを用いた特異的免疫療法などの新しい治療法の開発に結びつくものと期待できる。また、同様のアプローチによる研究は口腔扁平苔癬においても進んでいる。
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