当施設において得られた、術後性上顎嚢胞(P.O.M.C.)および上顎に発生した悪性腫瘍(O.K.K.)のComputed tomography (CT)像において、経静脈造影剤をCT撮影時に施行した場合と施行しない場合とで、両疾患の鑑別診断にどのように影響し、差異が出てくるかを検討した。また、同時に周囲頭頚部組織のCT値を計測し、頚静脈造影剤を施行した場合と施行しない場合とでどのように変化するかも検討した。 1.P.O.M.C.では嚢胞壁周囲、O.K.K.ではmass lesion周囲がそれぞれ頚静脈造影剤を用いることによってrim enhanceされ、病巣部と健常部とを容易に判別することができたのに対して、造影剤を用いなかった場合では、特にO.K.K.の場合に判別が困難であった。 2.造影剤を用いることによってO.K.K.mass lesion内部のCT値は、病巣周囲組織のCT値上昇とともに上昇したのに対して、P.O.M.C.ではcyst内部のCT値の上昇は認められなかった。 3.周囲頭頚部組織については、筋肉(咬筋、外側翼突筋、内側翼突筋)、唾液腺(耳下腺)、海綿骨などは造影剤によりCT値の上昇が認められたが、脂肪や皮質骨などのCT値には変化は見られなかった。これらの結果は、各組織の血管の分布状態や血流の状態に依存するもの考えられた。
|