研究概要 |
嫌気性菌の増加に伴う根尖歯周組織の経時的変化において検索する第一歩として.根管内の嫌気性菌の増加を,細菌に対する血清抗体価の変動を指標として調べることができないかを検討することとした. 普通飼育雄Wistar系ラットの下顎第一臼歯の遠心根を抜髄し,根管内に,偏性嫌気性菌であるF.nucleatum(以下F.n.).通性嫌気性菌であるS.aureus(以下S.a.)の培養菌液を混合して注入した.菌液は,初回注入時から3日後および7日後に追加注入した.初回感染後3,14,28日後に,エーテル麻酔下で,心臓穿刺により経時的に採血を行い,被験血清を得た.各細菌に対する血清抗体価の測定は,酵素免疫測定法(ELISA法)により行った. その結果,通性嫌気性菌であるS.a.に対する抗体価は,術前から28日後にかけてわずかしか上昇になかったのに対して,偏性嫌気性菌であるF.n.に対する抗体価は,術前に比べて大きな上昇を示した.一般に,感染根管においては,時間の経過とともに根管内が次第に嫌気的になり,偏性嫌気性菌優勢の細菌叢となると考えられており,本実験においても,偏性嫌気性菌であるF.n.が,根管という嫌気的になりうる環境が存在する場合に,有意に増加してきたことを示しているものと思われた. 今後,血清抗体価の変動と,根尖歯周組織の病理組織学的変化との関連について検索していく予定である.
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