Actinobacillus actinomycetemcomitans(A.a)は、若年性歯周炎の原因菌として注目されている。しかしながら、その病原因子と病態との関係についてはほとんど研究が進んでいない。本研究では、同菌の産生する65kDaのストレスタンパク質(HSP)を用いて、このタンパク質によって活性化するT細胞、特にγ/δ型T細胞の動態をin vitroにおいて調べた。ついで、免疫組織学的手法を用いて、若年性歯周炎患者の歯周組織におけるγ/δ型T細胞の局在を調べ、同疾患におけるHSPの役割について検討した。 1.A.a由来65kDaストレスタンパク質の調製 Actinobacillus actinomycetemcomitans Y4株を37℃のBHIブロース中で対数増殖期まで培養した。その後、42℃で1時間培養し、培養上清を回収する。この上清を硫安で濃縮後、65kDaストレスタンパク質対するモノクロナール抗体をリガンドに用いたアフィニティクロマトグラフィー法によって精製をおこなった。 精製HSPのγ/δ型T細胞に対する活性の測定 ヒト末梢血から比重遠心法でリンパ球を分離した後、これにHSP標品を添加し、37℃で3日間培養した。培養終了後、細胞を回収し、これにFITC標識抗γ/δ抗体を作用させた。その後、フローサイトメーター(EPICS XL)を用いて、その動態を観察した。 3.組織試料の採取および調製 歯周外科処置時に採取した若年性歯周炎患者5名の歯組織を用いて、凍結およびパラフィン標本を作製した。 4.組織中のγ/δ型T細胞の同定 3.で得た各標本に抗γ/δモノクローナル抗体を作用させた後、酵素抗体法で同定をおこなった。 本実験の結果、in vitroにおいて65kDaのHSPはヒト末梢血γ/δ型T細胞を増加させることが明かとなった。また、若年性歯周炎患者の歯肉組織中には65kDaのHSPの存在が確認されたが、γ/δ型T細胞の存在については明確な結果は得られなかった。今後、症例数を増してさらに検討したいと考えている。
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