歯根吸収の原因の一つにアンキロ-シスがあることが一般的に知られている。カンキロ-シスとは、歯根と骨とが直接接することにより生ずる骨性癒着のことである。その結果歯根は、骨のリモデリングに組み込まれて吸収されていくことが臨床的に明らかになっている。またこの歯根吸収において歯根膜の存在が重要視されている。しかしながら歯根吸収と歯根膜との関係についての研究は、いずれもin vivoにおける研究でありin vitroで検討した報告はない。そこで本研究は、歯根吸収に対する歯根膜の影響を検討するために兎の分離破骨細胞とヒト歯根膜細胞を使用し、培養歯根膜細胞の破骨細胞活性への影響を調べた。 牛大腿骨骨片上でヒト歯根膜細胞と兎の分離破骨細胞を48時間混培養し、培養終了後、骨片上に形成された吸収窩を抗コラーゲンType-I抗体を用いた免疫染色により可視化して吸収窩の定量を行い破骨細胞活性に対する歯根膜細胞の影響を検討した。なおコントロールは破骨細胞のみ骨片上で48時間培養した。さらに破骨細胞の骨吸収活性の発現に関与すると考えられている細胞骨格変化の中からF-アクチンにより構成されたpodosome形成率についても検討するために、カバーグラス上で歯根膜細胞と破骨細胞を混培養した。培養終了後、蛍光標識ファロイジンにより破骨細胞のF-アクチンを観察し、TRAP陽性破骨細胞様細胞中のpodosome形成細胞数の割合を求めた。結果より吸収窩の数、面積は歯根膜細胞と混培養することにより有意に減少した。またpodosome形成率についても歯根膜細胞と混培養することにより抑制された。以上より歯根膜細胞は直接破骨細胞に接することにより破骨細胞の骨吸収活性を抑制すると考えられた。また本実験より、歯根膜細胞は歯根吸収を防御する機能を有することが示唆された。
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