業者らは、長年にわたり、バイオフィードバックを利用した咬合診査法を顎関節症患者に応用し、良好な成績をおさめている。本研究では、咬合調整のみで治癒した患者群を対象とし、個々の症例の顎関節症発症に関与していた咬合異常部位について検索し、これらと各咀嚼筋および顎肩部筋群の疼痛発現部位との関連を検討した。被験者は、当科に来院した顎関節症患者で、修復物が少なく完全歯列を有し、通法の咬合診査では咬合高径や咬合位の明かな異常を認めない26症例を用いた。これらの被験者は、バイオフィードバックを用いた咬合診査によって検出された咬合異常部位の咬合調整により完全治癒した患者である。 (1)本研究の被験者は、治療前に咬合接触点数の著しい左右的不均衡が認められ、また症状消失時にはこの不均衡が改善していることが明らかになった。(2)被験者は、26例中22例で片側のみに筋の疼痛が認められた。また、咬合異常部位は、26例中24例で片側のみに検出され、23例で大臼歯部に存在した。(3)症状と咬合異常部位がともに片側にのみ認められた22症例において、症状側の同側に咬合異常部位が検出された症例は17例であり、反対側に咬合異常部位が検出された症例は5例のみであった。(4)さらに、これらの症状側の同側に検出された咬合異常は、17例中6例で下顎頬側咬頭舌側斜面に、7例で頬・舌側咬頭の前方斜面に、また4例が後方斜面に存在した。(5)これらの結果から、顎関節症の各咀嚼筋および頸肩部筋群の疼痛の発現は、咬合異常部位と密接な関連を有し、なかでも下顎運動の前方成分を規制する、すなわち下顎に対して後方方向の咬合成分を発揮するような咬合接触の異常が大きく関与していることが示唆された。
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