研究概要 |
生体親和性と強度並びに耐食性に優れた純チタンは機械加工が困難な欠点を有している。チタンにイオウと希土類元素(REM)を複合添加し粒状物を析出させた快削性チタンについて,インゴットと鋳造体試料を準備し歯科高速切削装置・用具を用いた切削実験を行い以下の知見を得た。(1)快削性チタンの機械的強度(硬さ等)は純チタンと同等であった。(2)快削性チタンの金属組織学的特長(結晶組織等)も純チタンと同等であった。(3)快削性チタンの被削性は純チタンを有意に上回っていた。特に,延性素材の切削に適したカ-バイドバ-を使用した時,前者の切削効率は後者のそれを2倍程度上回っていた。SEM観察の結果,快削性チタンでは切削時に(断熱)せんだん変形が生じ易く切屑の発生を容易にし,かつ切削回転用具の切り刃先端の損耗の程度を小さくしたものと考えられた。硬脆材料の研削に適したダイヤモンドポイントを使用した時では,快削性チタンの切削効率は純チタンのそれをわずかに上回る程度であった。インゴットに比べ,鋳造体では酸素吸収に伴う硬さの増加により切削効率が2〜3割程度減少する傾向も認められた。なお,鋳造に伴う硬さの増加は表層部ほど顕著なため,切削深さの増加に伴い切削効率は上昇する傾向が認められた。被削性の点で快削性チタンを他の歯科用合金と比較すると,快削性チタンの削れ易さは銀-インジウム系合金や金-銀-パラジウム合金と類似し,ニッケル-クロム系合金をかなり上回るものであった。 結論:快削性チタンは機械加工による歯科補綴物(クラウンやインレー等)の被削素材に適すると考えられた。チタンの加工に適した切削回転用具と研磨用具の開発も今後必要と考えられた。
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