支台歯形成実習に固有感覚に基づいた演繹(pd)法によるトレーニングの導入を考え指導を行うには、水平位診療での基本姿勢について先ず明らかにする必要があると考え、我々が日常臨床で形成時にとる姿勢との比較検討を行うことにした。今回は、主として筋電図を基に筋の活動量から診療姿勢の違いによる一定作業あるいは繰り返し作業が筋、骨格系に及ぼす影響として筋肉の疲労に着目し考察することを試みた。 筋電図による筋の活動量の検討として、上顎臼歯部の全部鋳造冠の形成を直視あるいは鏡視で行う場合の姿勢について、姿勢の保持に関与していると考えられる背筋郡に着目し、誘発電位検査装置MEB-5304(日本光電工業)を用い、表面筋電図の測定を行った。今回は、実験方法の検討を目的としたため、被験者として臨床経験が少ない新入医局員の協力を得て研究を行うことにした。同じ姿勢を保持し続けた時の一定時間間隔での経時的筋電図を測定しその活動量の変化について検討を加えたところ、基本姿勢での筋活動は安定していると考えられるが、指示通りの同じ姿勢を長時間保つことは難しく測定結果にばらつきが認められたため姿勢の客観的な定義や環境条件についての検討の必要性が認められた。また、実際の臨床に近い状態を想定した短時間の姿勢保持の繰り返しに対する検討では、休憩時間を長くした場合は活動量に繰り返しによる変化は認められにくいが、短時間の休憩で回数を増すことにより姿勢の違いによる活動量の変化が認められた。これらのことから、今後の研究において、測定条件の再検討を行い、被験者数を増やし基本姿勢の有用性について検討を進めていく予定である。
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