研究概要 |
総義歯装着患者の義歯について客観的評価を行ううえで、咀嚼筋(主に咬筋)の筋活動電位量の左右バランス、咬合接触状態、顎堤粘膜の厚さなどの因子について、簡易筋電計(マッスルバランスモニター)、咬合力測定装置(デンタルプレスケール50))および超音波粘膜厚さ計測器を用いて測定することによって評価可能であるかどうか、また患者自身の義歯に対する主観的満足度評価や咀嚼可能食品アンケート調査との一致性について検討した。 1.左右筋活動のバランス(最大かみしめ時およびタッピング時)および左右咬合接触バランス(最大かみしめ時)には相関関係があり,それらは一致する傾向が認められた.また患者自身の義歯に対する主観的満足度が高く,咀嚼機能評価において良好な成績であった症例では筋活動および咬合接触の左右バランスは良好であった.しかしながら,咬合接触と比較して筋活動の左右バランスは,被験者のかみしめ状態や咀嚼習慣が影響し,測定のばらつきは大きかった. 2.義歯に対する満足度も低く,咀嚼機能評価でも良好な結果が得られなかった症例のうち,特にかみしめ時に片側的な顎提粘膜の疼痛を訴える患者においては,疼痛を回避する筋および咬合接触バランスの変化が認められ,とくに筋バランスにおいて顕著であった.また義歯調整後においては有意なバランスの改善が認められた. 3.顎堤粘膜の厚さ(下顎のみ)は,歯槽頂部,唇頬側顎堤部,舌側顎堤部の順に減少していたが,疼痛発現部位と粘膜厚さの大小は必ずしも一致してなかった.また軟性裏装材料を適応すべきかどうかの判断を平均粘膜厚さから行うまでには至らなかった.今後さらに症例数を増やし,検討を重ねていくつもりである.
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