各種生体材料の骨芽細胞と免疫細胞に対する影響を解明するために、in vitroにおいて石灰化能を有するラット骨髄細胞を用いて材料表面での骨形成細胞の動態および石灰化過程、さらにリンパ球とマクロファージの免疫機能に及ぼす影響を検討し次のような結果を得た。骨芽細胞に関して、ラットより骨髄細胞を採取し水熱処理前後の酸化チタン、陽極酸化前のチタン、純チタン、生体活性ガラス上で細胞を培養し材料上での細胞の動態、石灰化の過程を検討した。その結果、すべての材料上で骨髄細胞は良好な親和性を示し、経時的に良好な細胞増殖と石灰化と思われる分化過程が観察された。これらの過程で生産された組織をEPMAによい原素分析すると、CaとPが観察されその濃度が経時的に増しているのが確認され、材料上で骨形成細胞による石灰化が進行していることが解明された。しかし、その過程は各材料によって速度と程度に差が観察された。最も石灰化の進行が早いのは生体活性ガラス、比較的遅いのが純チタンであり他の材料はその中間に位置していた。また、石灰化の程度に関しては生体活性ガラスがその過程において、石灰化組織の生成が早く生体活性ガラスから溶出するCaとPイオンの影響が考えられた。免疫細胞に関しては、水熱処理前後の酸化チタン、陽極酸化前のチタン、純チタンを被験材料としてリンパ球培養系からリンパ球の増殖を^3H-thymidineの取り込みにより検討し、各材料とも増殖に影響しないことが確認された。また、マクロファージ培養系から培養上清中のIL-1の活性を酵素免疫測定法(ELISA法)にて測定し、同様にマクロファージ活性に影響しないことが解明された。
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